猫の爪切り《獣医師監修》切り方のコツや嫌がる猫の対処法などを紹介
ペットを飼ううえで欠かせないのが、こまめなお手入れです。中でも爪切りは、嫌がる猫が多く、苦労している飼い主も多いのではないでしょうか。猫や飼い主の安全のためには、爪切りをしてあげる必要があります。
今回は、猫の爪切りについて、爪切りの必要性や手順、嫌がる猫への対処法などを解説します。猫の爪切りがうまくいかず悩んでいる方は必見です。
- 猫の爪切りする必要性とは?
- 猫の爪を伸ばしっぱなしにした場合に考えられるリスク
- 猫の爪切りに必要な物・あった方がいいもの
- 猫の爪切りの手順とコツ・注意点
- 爪抜きは絶対にNG!
- 猫の爪切りの頻度は?
- 爪切りを成功させる方法・嫌がる愛猫の対処法は?
- どうしてもうまく切れない時はプロに任せる
- まとめ
猫の爪切りする必要性とは?
室内でペットとして飼われている猫は、木に登ったり獲物を捕まえたりする機会がないため、爪が摩耗しません。そのため、飼い主がお手入れで爪を切ってあげる必要があります。
爪切りをしないまま放置すると、後述のようにケガや病気のリスクが高まります。飼い主がケガをしたり、家具がボロボロになったりすることもあるため、必ず爪切りをしましょう。
猫の爪の構造と働き
猫の爪切りをするうえでは、猫の爪の構造や働きについて理解しましょう。
猫の爪は多層構造になっており、爪とぎをすると外側の古い爪が剥がれ、内側から新しい爪が出てくるようになっています。また、猫は自分の意志で爪を出し入れできます。普段は肉球の間にしまわれており、高いところを登ったり、ものを掴んだりする際に爪を出しているのです。
爪の内側には神経と血管が通っており、「クイック」と呼ばれます。ピンク色になっているため、爪切りの際の目安になるでしょう。
ただし、黒い爪の場合はクイックを目視できないため、注意が必要です。
爪とぎと爪切りの違い
猫は爪とぎを行います。「自分で爪をといでいるから爪切りは必要ない」と考える方もいらっしゃいますが、実は爪とぎと爪切りは別物です。
猫が行う爪とぎでは、外側の古い爪を剥がし、新しい爪を出します。一方、爪切りは爪の先端を切る行為です。爪とぎで出てくる新しい爪は鋭利であるため、爪切りをしないと、引っかかってケガをしてしまう可能性があります。そのため、爪とぎを行っている猫であっても、必ず爪切りをしなければなりません。
猫の爪を伸ばしっぱなしにした場合に考えられるリスク
爪は切ってもまた伸びてくるため、爪切りはこまめに行う必要があります。
猫の爪を伸ばしたままにすることは危険です。ここでは、猫の爪を伸ばしっぱなしにした場合に考えられるリスクについて解説します。
- 爪が折れたり肉球に刺さったりする
- 爪が太くなってしまう
- 飼い主やほかのペットを傷つけてしまう
- 飼い主が感染症になるリスク
爪が折れたり肉球に刺さったりする
爪が長いまま放置すると、カーペットやカーテンなどに引っかかった際に、根本から折れて出血してしまう可能性があります。
また、爪が伸びて巻き爪のようになると、肉球に刺さり、痛みを伴います。歩行が難しくなったり、肉球が傷ついて化膿してしまったりする恐れがあるため、愛猫のためにも必ず爪切りをしてあげましょう。
中には、爪とぎがうまくできなかったり、あまり爪とぎをしない猫も存在します。この場合は、特に爪を放置すると危険な状態になってしまうため、爪切りが欠かせません。
爪が太くなってしまう
老猫や普段から爪とぎをあまりしない猫の場合、古い爪が剥がれず爪が太くなってしまうことがあります。爪は内側に向かって伸びるため、肉球に刺さりやすくなり、傷や化膿に繋がってしまうのです。爪が太くならないよう、こまめに爪をチェックしてケアしてあげる必要があります。
飼い主やほかのペットを傷つけてしまう
長い爪は、飼い主やほかのペットを傷つけてしまう可能性があるため、注意が必要です。特に多頭飼いをしている場合、猫がじゃれあったりケンカをしたりした際に、ほかのペットが大ケガをしてしまう危険性があります。
ほかにも、家具や壁がボロボロになってしまうリスクも考えられます。
飼い主が感染症になるリスク
飼い主が猫に引っかかれることで、感染症を引き起こす可能性があります。代表的な感染症は、「猫ひっかき病」と「パスツレラ症」です。
猫ひっかき病は、バルトネラ菌によって起こる感染症で、子猫に引っかかれたところから菌が入り、発症する可能性が高い病気です。頭痛や発熱、倦怠感などの症状が現れ、リンパ節が腫れてしまいます。
パスツレラ症は、パスツレラ菌によって起こる感染症です。引っかかれて傷ついた部分が腫れて赤くなります。抵抗力が弱い方や基礎疾患を持っている方は、重症化してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
猫の爪切りに必要な物・あった方がいいもの
ここでは、猫の爪切りに必要なものや、あった方がいい便利なアイテムを紹介します。
- 猫専用爪切り
- ご褒美
- 猫と飼い主の安全対策グッズ
- 止血グッズ
1:猫専用爪切り
猫専用の爪切りには、ハサミタイプとギロチンタイプがあります。それぞれの特徴・メリット・デメリットは以下のとおりです。
<ハサミタイプ>
特徴:使い慣れた文房具のハサミと同じ構造です。刃先が半円状にくぼんでおり、そこに爪を当ててカットします。
メリット:はじめて爪切りをする飼い主にも使いやすいです。コンパクトで持ちやすく、深爪防止のためのストッパーがついている便利なものもあります。
デメリット:切断力があまり強くないため、成猫の硬い爪を切るのは難しいでしょう。爪切りの時間が長くなり、猫がストレスを抱えてしまうこともあります。
<ギロチンタイプ>
特徴:穴に爪を通し、ハンドルを握ると一瞬で爪を切れる道具です。スライドカッターとも呼ばれます。
メリット:切断力が強く、硬い爪もスパッと切れるため、爪切りを短時間で行えます。力が均等にかかるため、爪が割れにくいのもメリットです。
デメリット:穴は成猫の爪に合わせたサイズであるため、子猫に使うと深爪してしまうリスクがあります。また、太くなった爪が穴に入らず、使えないこともあります。
2:ご褒美
ご褒美として、猫のお気に入りのおもちゃやおやつを用意しておきましょう。爪切り前に猫を落ち着かせる際や、爪切り後にご褒美をあげる際に役立ちます。
3:猫と飼い主の安全対策グッズ
爪切りの際に猫を落ち着かせたり固定したりする時は、洗濯ネットやバスタオルを使うのが効果的です。おすすめは、洗濯ネットで包んで安心させる方法です。猫を入れても余裕のある大きさの洗濯ネットに入れて、手肢だけを出して爪を切ると、簡単に切れます。
爪切り中に猫が暴れると、爪を切りすぎてしまったり、飼い主がケガをしてしまったりする可能性があります。猫と飼い主の安全を守るためにも、これらの安全対策グッズを活用してください。
4:止血グッズ
万が一血管を切って出血してしまった場合にすぐ処置できるよう、清潔なガーゼやコットン、止血剤(クイックストップ)などの止血グッズを用意しておきましょう。猫を抱っこして患部を5分程度押さえると、止血できる場合がほとんどです。
抱っこを嫌がって圧迫止血が難しい場合は、止血剤を使用するとすぐに血が止まります。血を拭き取ってから、止血剤を患部に押し当てましょう。飼い主の指がただれてしまう可能性があるため、手袋をつけて塗るか、塗り終わったらすぐに手を洗うようにしてください。
処置をしても血が止まらない場合は、動物病院を受診しましょう。
猫の爪切りの手順とコツ・注意点
猫の爪切りの手順は、以下のとおりです。
- 猫が落ち着ける体勢にする
- 爪を出す
- 爪を少しずつ切る
- ご褒美をあげる
ここでは、猫の爪切りの手順を、コツや注意点とともに解説します。
猫が落ち着ける体勢にする
まずは、猫が落ち着ける体勢にしましょう。ご褒美をあげ、ご褒美に集中している間に猫を後ろから抱えます。ひざの上に乗せた後、利き手と反対の手で足先を持ちましょう。後ろ足から始めるとやりやすい場合が多いです。
この時、嫌がる猫を無理矢理押さえ込んでしまうと、爪切りがトラウマになってしまいます。おやつを足したり、大きなバスタオルや洗濯ネットで包んだりして、猫が落ち着けるような環境を作りましょう。
爪を出す
爪は普段肉球の中に隠れているため、爪を出す必要があります。上下から肉球を手で軽く押し、爪を出しましょう。強く押しすぎると嫌がられてしまうため、注意が必要です。
爪を少しずつ切る
先端部分を2~3mm程度カットします。深爪しないよう、少しずつ切りましょう。ピンク色のクイックには血管や神経が通っているため、そこを避けることがポイントです。
爪が黒い猫の場合は、血管が見えず、どこまで切ってよいかわからないでしょう。その場合は、肉球の高さを目安に切るとうまくいきます。
万が一切りすぎて出血してしまった場合は、すぐに止血処置を施しましょう。
ご褒美をあげる
爪切りが終わったら、「よく頑張ったね」とたくさん褒め、ご褒美のおもちゃやおやつをあげましょう。
爪抜きは絶対にNG!
猫の爪を抜く抜爪手術、いわゆる爪抜きという方法も存在します。爪の生え際を骨ごと切除したり、レーザーで爪を切除したりする手術です。しかし、猫にとってデメリットが多く、日本では推奨されていません。
猫にとって、爪とぎは本能的な行動であり、ストレス発散やリラックスにもつながります。そのため、爪抜きで爪とぎができなくなることは、大きなストレスになってしまうのです。ストレスから、精神的に不安定になったり、問題行動が増えたりする可能性があります。また、手術の後遺症が起こるリスクも考えられます。
このように、爪抜きにはさまざまなデメリットがあります。爪のお手入れは大変ですが、だからといって爪抜きをすることはやめましょう。
猫の爪切りの頻度は?
猫の爪切りの頻度は、成猫の場合は一般的に3週間〜1ヵ月に1回が目安です。もちろん、爪が伸びるスピードや活動量によって、爪を切るべきタイミングは異なります。日頃から爪の状態をチェックし、尖っている部分はその都度切ってあげるようにしましょう。
子猫の場合は、爪が伸びるスピードが速く運動量も多いため、長い爪でケガをしてしまうリスクが高いです。1~2週間に1回を目安に爪を切ってあげてください。
爪切りを成功させる方法・嫌がる愛猫の対処法は?
爪切りを嫌がる猫は多いですが、だからといって爪切りをしないわけにはいきません。ここでは、爪切りを成功させる方法や、嫌がる愛猫の対処法について解説します。
- 一度ですべて切らず、何度かに分けて切る
- 猫が活発な時間帯は避ける
- 爪切り前にご褒美を与える
- 足を触られることに慣れさせる
- 猫の性格に合わせた対策を行う
1:一度ですべて切らず、何度かに分けて切る
爪切りを嫌がる場合、一度にすべての爪を切る必要はありません。1日1本や、1週間で片足のケアをする、など、猫が受け入れられる範囲で何回かに分けて進めるのがおすすめです。
爪切りに時間がかかると、猫がイライラして暴れる原因になります。何度かに分けることで、1回の爪切りの時間が短くなり、猫にかかるストレスも軽減できるでしょう。
2:猫が活発な時間帯は避ける
猫には、活発な時間と落ち着いている時間があります。猫が活発に動き回っている時間帯は、興奮しやすいため、爪切りがうまくいかない可能性が高いです。猫が落ち着いて、ゆっくりしている時間帯に爪切りを行いましょう。
3:爪切り前にご褒美を与える
いきなり爪切りを見せると、猫が警戒して爪切りをさせてくれない場合があります。爪切りの前におもちゃやおやつなどのご褒美を与えて、リラックスさせましょう。
もちろん、爪切り後にご褒美を与えるのも効果的です。「爪切りをするといいことがある」と覚えてもらうと、その後の爪切りがやりやすくなるでしょう。
4:足を触られることに慣れさせる
猫の足先は敏感な場所であるため、触られることを嫌がる猫が多いです。日頃からスキンシップで足を触り、慣れさせましょう。
いきなり足を触ると拒絶されてしまうため、まずは猫が触られるのを喜ぶ、首や背中、胸からスタートします。少しずつ足に近づき、足を揉んだり、肉球を軽く押したりしてみてください。
5:猫の性格に合わせた対策を行う
嫌がる猫を落ち着かせる方法としては、おやつやおもちゃで気をそらしたり、バスタオルで包んで安心させたりする方法が挙げられます。猫の性格によって効果的な方法は異なるため、どの対策が効果的かを見極めましょう。
どうしてもうまく切れない時はプロに任せる
猫がどうしても爪切りを嫌がり、暴れたり噛まれたりする場合は、無理せず動物病院やトリミングサロンに依頼しましょう。無理矢理爪切りを行うと、トラウマになってますます爪切りを嫌がるようになったり、飼い主との信頼関係が壊れてしまったりする原因になります。暴れた際に爪切りに失敗し、大ケガにつながる危険性もあります。
プロの力を借りながら、自分でもできるように徐々に爪切りに慣れさせましょう。
まとめ
今回は、猫を飼ううえで重要な爪切りについて解説しました。日頃爪とぎを行っている猫でも、猫や飼い主の安全のためにはこまめな爪切りが必須です。猫がリラックスできる状態を作り、深爪にならないよう少しずつ爪切りを行いましょう。
爪切りを嫌がる場合は、おやつをあげたり布で包んだりと、猫の性格に合わせた工夫が必要です。どうしても難しい場合は、動物病院やトリミングサロンに依頼し、無理なく爪切りを行ってください。
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