【獣医師監修】犬の生理(ヒート)とは?生理期間や必要なケア、注意点を紹介
犬の生理は、女の子の犬を飼うにあたって必ず確認しておきたいことのひとつです。犬と人では、生理期間や周期、症状などが大きく異なり、正しく理解しておかないと生活する中でトラブルが発生してしまうかもしれません。
今回は、犬の生理(ヒート)について、期間や必要なケア、注意点を解説します。女の子を迎える方や、既に飼われている方もぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
- 犬の生理(ヒート)とは?
- 人の生理(月経)との違いは?
- 犬の発情周期
- 犬の生理はいつから始まる?
- 犬の生理はいつで終わる?
- 犬の生理期間は何日ぐらい?
- 犬の生理前後の症状
- 犬の生理中に必要な対応
- 家での注意点
- 食事の注意点
- 散歩やドッグラン等、お出かけ時の注意点
- 病院での受診が必要なケース
- よくある質問
- 愛犬のもしもに備えて保険に加入しましょう
- まとめ
犬の生理(ヒート)とは?
犬の生理は「ヒート」と呼ばれており、避妊をしていないメスであれば必ず起こる現象です。通常、生後5〜10ヶ月頃から生理が始まりますが、個体差により生後1〜2年を過ぎてから始まることもあります。その後、大型犬も小型犬も年に2回の周期で生理が起こります。発情周期(発情から次の発情までの周期)は「発情前期」「発情期」「発情休止期」「無発情期」の4つの区分を1サイクルとし、5〜10ヶ月の間隔で繰り返されます。生理による陰部からの出血は「発情前期」から「発情期」にみられ、1週間から10日ほど続きます。
人の生理(月経)との違いは?
犬の生理は「ヒート」と呼ばれ、「発情」という意味で使用されます。そのため、子宮内膜からの周期的な出血を意味する人間の生理とは、少し意味合いが異なります。また、仕組みや症状もそれぞれ異なります。
人間の生理は、ほぼ1ヶ月周期、約2週間で子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに体外へ排泄されます。子宮内膜が剥がれる際に、子宮が収縮され痛みを伴うことがあります。
一方、犬の場合、子宮内膜からの出血は発情出血と呼ばれ、子宮内膜が充血することで起こる現象なので、痛みは特に感じないといわれています。
犬の発情周期
発情前期
発情出血が始まってから、オスに交尾を許容するまでの期間を指します。だいたい7~10日間ほど続き、外陰部の腫れや充血、子宮内膜の充血による陰部からの出血など、さまざまな発情徴候がみられます。発情期に近づくにつれ、外陰部の腫れや発情出血もだんだん強くなっていきます。膣分泌中の性ホルモンによってオスをひきつけますが、まだ交尾は許容しません。
発情期
オスに交尾を許容する期間を指し、だいたい7~10日間ほど続きますが、個体によって大きな差が生じます。排卵は、発情期に入ってから約3日目に起こり、その後は、外陰部の腫れが徐々に退縮します。発情出血も発情期の中ごろから減少し、色も赤色から淡いピンク色に徐々に薄くなっていきます。
発情休止期
発情出血が止まってから、オスの交尾を許容しない2ヶ月間を指します。この時期は、妊娠の有無に関わらず妊娠を維持する働きを持つホルモンが分泌されます。このホルモンの影響で、妊娠した時と同じように乳腺が発達し、乳汁がわずかに分泌されるようになります。これを生理的偽妊娠といいます。
無発情期
発情休止期から次の発情前期までの4〜8ヶ月間を指します。発情周期の中でもっとも長いこの期間は、ホルモンの分泌量が減少し、卵巣の活動など妊娠に関わる機能が停止します。そのため、避妊手術を受けた犬と同じように落ち着いた状態になります。
犬の生理はいつから始まる?
犬の初めての生理は、性成熟を迎える生後5〜18ヶ月頃といわれていますが、体の大きさなどによって異なります。一般的に小型犬は生後5〜13ヶ月ほど、大型犬は10〜18ヶ月ほどで迎えるといわれています。ただ、稀に生後2年を過ぎてから初めて生理を迎える子もいますが、心配であれば早めに動物病院を受診するのがよいでしょう。
犬の生理はいつで終わる?
人間はある程度の年齢を越えれば、生理が一切来なくなる閉経を迎えます。しかし、犬は人間と異なり、避妊をしていなければ生理が終わることはありません。ただ、加齢に伴い出血量や出血日数が減少することはあります。
犬の生理期間は何日ぐらい?
犬の生理期間、いわゆる発情前期と発情期を合わせた長さは、約8〜21日間です。その期間中、発情出血がみられるのは、1〜2週間程度といわれています。期間も出血量も個体によって差があり、出血量が極度に少なかったり、血を自分で舐めて拭き取ってしまうなど、生理が来ても飼い主が気づかないケースがあります。また、高齢になると発情周期が不規則になり、期間の長さや出血量に乱れがみられることもあります。
犬の生理前後の症状
生理の前
犬の生理周期は人間に比べて長いため、生理の来る日を予測しづらく、予期せぬときに生理がきてしまうというケースは少なくありません。発情前期の1ヶ月半前くらいから、外陰部が徐々に腫れてきたり、少し血が混じったような分泌液が出てくるなどの症状がみられたら、生理が始まる前兆と考えられます。生理が近づくにつれ、そわそわした落ち着きのない様子がみられるようになります。また、免疫力が低下するため、感染症などに注意する必要があります。
生理中
発情前期に入り、外陰部が腫大して発情出血が始まると、落ち着きがなくなり、多飲多尿などの症状が見られるようになります。元気や食欲が普段よりも低下したり、お散歩を嫌がることがあります。また、生理中は性ホルモンの影響でオスをひきつけます。 散歩中にオスに出会うと、興奮したオスに飛びつかれたりするなどのトラブルが起こる危険性があります。 そのため、他の犬に遭遇しにくい時間や場所を散歩するのがおすすめです。食欲が低下してエサ食べなくなる仔もいます。
生理の後
発情出血が終わり発情休止期になると、先述したように妊娠の有無に関わらず、ホルモンの影響で妊娠したときと同じような症状がみられます。排卵から約40日後から乳腺が発達し、絞るとわずかに乳汁が分泌したり、ぬいぐるみやおもちゃなどを抱えてケージに持ち込む、まるで子守のような行動が見受けられることがあります。また、この時期は子宮に膿がたまる「子宮蓄膿症」という病気が起こりやすいため、注意が必要です。
犬の生理中に必要な対応
おむつやマナーパンツは必要?
一般的に発情出血が始まったときは、おむつやマナーパンツを履かせて、周りの家具や床に血液が付着するのを防ぎます。出血量は個体差がありますが、特に小型犬は出血量が少なく自分で舐めて陰部をきれいにする子が多いため、おむつやマナーパンツが必要ない場合もあります。出血が多く、カーペットなどを汚してしまう場合にはしてあげると良いでしょう。
犬の陰部のケア方法は?
おむつを履いたまま長時間放置すると、おむつ内の湿気でかぶれを起こすことがあります。おむつを外す時間を作ったり、こまめに取り替えるなど、陰部を清潔に保つよう心掛けましょう。また、陰部周りの毛を短くすれば、血液が毛に付着しにくく、汚れ防止に効果的です。
また犬全般は、自分で陰部を舐めてきれいにするため、拭いてあげる必要はほとんどありませんが、個体によっては出血量が多い子もいます。濡れたコットンや、犬用のウェットティッシュなどで優しく拭きとってあげましょう。必要に応じてぬるま湯で洗い流すのも効果的です。
シャンプーをしても大丈夫?
生理中の犬は、身体の免疫力が低下することで細菌感染を引き起こしやすくなり、出血等で汚れた陰部からウイルスが侵入する恐れがあります。そのため、陰部を清潔に保つという意味で、シャンプーは効果的です。一方で、犬はシャンプーをすると体力が大幅に消耗されます。免疫力が低下しているなか、体力が消耗されるとさらに感染症のリスクが高まります。また、発情中は陰部が開くので、シャンプー時に膣や子宮から細菌が侵入する可能性があります。陰部を清潔に保てればシャンプーは避けた方が宜しいと思います。
家での注意点
生理中は警戒心が強い
生理中の犬は警戒心が強い傾向にあります。特に、生理直後の偽妊娠の症状がみられるときは、犬に刺激を与えるような行動をするのは控えましょう。例えば、子守りのようにおもちゃやぬいぐるみを大切に抱えているときに、それらを取り上げようとすると、手を噛まれる危険性があるため、そっと見守ってあげるようにしましょう。
他の同居犬とのトラブルに注意
普段は仲良く生活している同居犬でも、生理中になるとケンカやトラブルが起こる可能性があります。例えば、未去勢のオスと同居している際、妊娠を望まないのに妊娠してしまうケースがあります。必要に応じて部屋を分けるなどの対策をしましょう。
食事の注意点
生理中の犬は体調を崩しやすく、食欲が低下してしまうことは少なくありません。特に初回の発情時によくみられます。
食欲を少しでも高めるために、愛犬の好きなものをトッピングしたり、香りのあるスープを加えるなどの工夫をしましょう。あまりにも食欲がないときは、動物病院を受診してみると良いでしょう。
散歩やドッグラン等、お出かけ時の注意点
先述したように、生理中の外出は注意が必要です。オスと遭遇すると、生理中のホルモンの影響でオスを興奮させ、飛びつかれたりするなどのトラブルが発生する危険性があります。
そのため、他の犬に遭遇しにくい時間や場所を選んで外出するのがおすすめです。
また、他の犬が他の犬の血を舐めて感染症にかかるケースは少なくないため、発情出血が始まってから血が完全に止まるまでを目安に、おむつやマナーパンツを履かせて外出すると紳士的です。
病院での受診が必要なケース
長期間出血している場合
発情出血は一般的には8日前後、長い場合は2〜3週間ほど続きます。出血期間は個体差によりますが、1ヶ月を超えても出血がおさまらない、普段より1週間以上長いなど、発情出血に異変を感じた場合は、子宮の病気である可能性も考えられるため、動物病院を受診するのがおすすめです。基本的に2週間以上出血が続く場合は異常と判断します。
子宮蓄膿症の場合
子宮蓄膿症は、放置すると命に関わる危険性があり、早急な治療が必要な病気です。発情期に次のような症状がみられる場合は、動物病院の受診がおすすめです。
- 生理が終わったばかりなのに1ヶ月くらいでまた生理が始まる
- 陰部から出血だけでなく膿のような粘液状のようなものが出る
早期に子宮内膜炎が診断されれば内科的治療で直すことが可能です。早期発見早期治療
で診察を受けましょう。
子宮蓄膿症の手術費用は、症状のレベルや地域などによって異なりますが、手術費用のみで50,000円~、入院や麻酔、検査などの費用を含めると150,000円前後は必要となるケースが多いといわれています。ここはなしでお願いします。
よくある質問
犬の生理が遅れている原因は?
犬の生理が遅れる原因は、妊娠、偽妊娠、ホルモンの異常、体調不良、病気などが挙げられます。また、犬は年齢を重ねるにつれて、生理の間隔が長くなったり、出血量も減ってくることがあります。そのため、飼い主が気づかないうちに生理が終わっており、見逃してしまっていたという場合も少なくありません。
犬が生理中に元気がない理由は?
犬の生理は、子宮内膜の充血によるものなので、腹痛はないと考えられています。しかし、ホルモンバランスが乱れることで、体調不良を起こすことがあります。例えば、食欲不振は生理中の犬に多くみられる症状です。長く続くようであれば、香り付きのスープを与えてみるなどの工夫をしましょう。ただ、生理自体は病気ではないので、過剰に心配する必要はありません。
「おりもの」のようなものが出ている場合は?
犬のおりものは、人間の女性と同じように、無色透明や少し白く濁っている乳白色をしています。また生理中は、血のようなおりものが分泌され、その強いニオイでオスを引きつけます。出血量に個体差があるように、おりものの分泌量にも個体差があり、一般的に大型犬ほど多い傾向にあります。
膿のような分泌物が出る場合は、子宮蓄膿症や膣炎、膀胱炎などの病気が考えられるため早期受診がおすすめです。
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まとめ
いかがでしたか。今回は、犬の生理期間や必要なケア、注意点について解説しました。犬と人の生理は、期間や周期、症状が大きく異なるため、正しく理解して適切な対応をする必要があります。また、生理中に異常がみられる場合は、重大な病気の可能性も考えられます。愛犬とより長く大切な時間を過ごすために、保険の加入を検討してみるのも良いかもしれません。